歯ぎしり・食いしばり治療

音だけではない、歯ぎしりの問題
自分の目で直接見ることができない「歯ぎしり」は、周囲の方に「音」を指摘されるまで、なかなか気づくことができません。ましてや外に音が出ない「食いしばり」状態であれば生活の中で気がつくことはほとんどなく、診療を通してお伝えしてもなかなか実感として信じていただけないのが現実です。患者さまに、歯ぎしりや食いしばりを何とか気づいていただき、前向きに対策や治療をしてほしいと願う理由、それは、歯ぎしりや食いしばりは「歯を失う大きなリスク」となるからです。歯を失う原因は、おおむね「虫歯」「歯周病」「力」の3つに分類されますが、歯ぎしりや食いしばりは「力」によるリスクの代表的な症状です。
歯ぎしり・食いしばりによる影響
- 歯の削れ
- クラック(ひび)
- 歯の根の破折(割れ)
- 顎関節症
- 歯ぐきの下がり
歯ぎしりは、これらをはじめとするさまざまな症状を引き起こし、最終的には歯を失う結果に繋がりかねません。起床時のあごの疲れ・痛みや虫歯とは異なる痛みなどに気づかれた時は、歯ぎしりや食いしばりの可能性も疑ってみてください。
歯ぎしり・食いしばり3つの対策
1)マウスピースによる対策

歯ぎしりや食いしばりは就寝中に行う行為であり、無意識下で行っているため、根本的に無くすことはできません。まずはどの程度の歯ぎしり・食いしばりを行っているかを把握したうえで、マウスピース(ナイトガード)による対策で歯への負担を軽減します。
歯ぎしり・食いしばり治療の流れ
1)歯ぎしり・食いしばり診断
歯ぎしり・食いしばりの程度を診断するために、就寝時にシート(ブラストチェッカー)を装着し、起床時にどの程度すり減っているかを診断します。

装着前と、それぞれ2晩装着した後の比較です。赤い色の削れによって、歯ぎしりの箇所と程度を確認できます。
2)ナイトガード(マウスピース)の装着
就寝時に「ナイトガード」というマウスピースを装着することで、歯やあごにかかる負担を軽減することができます。
2)日中の咬みしめに対するアプローチ

夜間の歯ぎしりや食いしばりがある方の多くに、日中に咬みしめる癖がみられます。そのように咬みしめる癖を歯科では「TCH」と呼び、上下の歯を接触させている状態のことをいいます。本来であれば、リラックスしているとき、上下の歯は当たることなく、ふわっと力が抜けて、唇が閉じています。夜間無意識下で行っている歯ぎしりや食いしばりと異なり、TCHは日中意識下で行っているため、ご自身の意識で改善していくことも可能です。また、TCHを改善してくことで、夜間の歯ぎしりや食いしばりを軽減できる可能性があるとも考えられています。まず、日中の咬みしめ癖に対してアプローチしていくことが、改善への第一歩です。
こんなときに要注意!
- 何かに集中しているとき
- 勉強や仕事中
- ストレスや緊張を感じるとき
- グッと力を入れて頑張るとき
3)ストレス対策

歯ぎしり・食いしばりの原因は、「ストレス」だといわれていることをご存じですか?ストレスがない方はおられないかと思いますが、少しでもストレスを感じることなく毎日を過ごせるよう、自分に合った方法で対策を行ってみてください。
飲酒による影響
歯ぎしり・食いしばりの症状は、ストレスのほか、飲酒によっても強くあらわれることがあります。過敏性神経炎(歯ぎしり・食いしばりにより奥歯がしみる症状)にお悩みの患者さまの食いしばり状況をブラックスチェッカーで確かめたところ、飲酒量が多い日のほうが強い歯ぎしり・食いしばりの症状が見られました。
お酒が好きな患者さまが、2枚のブラックスチェッカーをそれぞれ2晩ずつ装着された結果です。

飲酒量が少ないときの
ブラックスチェッカーの状態
1枚目を装着された2晩は、両日とも缶ビールを1杯だけ飲酒されたとのことです。前歯、奥歯ともに少し赤い色が削れています。透明の土台フィルムは、穴が開くこともなく残っています。

飲酒量が多いときの
ブラックスチェッカーの状態
2枚目を装着された2晩のうち、1晩は缶ビールを1杯、もう1晩はビール、焼酎、ハイボールなどをかなり飲酒されたとのことです。1枚目に比べ赤い色の削れが強くなっているとともに、透明の土台フィルムも破れてしまっています。
歯ぎしり・食いしばりのお悩みを持つ患者さまは、ナイトガードの装着とともに、ストレスや飲酒量もコントロールし、力による歯への負担を軽減しましょう。