Vol.4 上顎優先のインプラント治療(治療計画の重要性2)

歯を失う理由、それは虫歯や歯周病・食いしばりによる力(ちから)の作用など人それぞれです。しかし、歯の欠損の進行においては、多くの方に共通する傾向があります。

実は人間の歯は、上の歯か下の歯、どちらかの歯が先に無くなってしまうケースが圧倒的に多いのです。どちらだと思いますか?

すでに発表されている研究結果では、「歯の喪失傾向は下顎よりも上顎において先行しやすく、さらに上顎が無歯顎へと進行する症例が比較的に多い」(上下顎の喪失歯数のバランスについて 宮地建夫 歯科学法106.1.1~4.2006)、すなわち上の歯が先に無くなってしまうケースが多いと言われています。これは、実際に日々患者さまを治療している私たち歯科医師の臨床実感とも合致します。

では何故、上の歯から無くなるパターンが多いのでしょうか。

もちろんこれには理由があります。当院では、「上顎は受け皿、下顎はハンマー」という例えを用いて患者さまに説明するのですが、人間は骨格の構造上、口を動かす時には下の顎が動き、上の顎は動くことがありません。すなわち、食べ物を噛む時も言葉を発する時も、動くのは下の顎であり、上の顎が動くことはありません。

実際に、ご自身のお口でカチカチと噛んでみてください。下の顎が上下に動き、上の顎は常に下の顎の力を受け止める役割に徹しているはずです。これが私たちがよく用いる、「上顎は受け皿、下顎はハンマー」という言い回しの実際の動きです(下図左)。

受け皿とハンマー

さらに前歯についてもう少し詳細に見てみましょう。人間の前歯は、反対咬合(受け口)でなければ、カチッと噛んだ時、下の前歯が上の前歯の内側に接します(上図右)。

先ほど、「上顎は受け皿、下顎はハンマー」という言い回しをご紹介しましたが、上図からもわかるとおり、上の前歯は下の前歯がガチッ、ガチッと当たることにより、常に外側方(外側)に振られる力がかかっています。

咀嚼や発声をはじめ、あらゆる機会に下の歯から衝撃を受ける上の歯。この時、歯周病などの疾患で歯の状態が好ましくなかったりすると、ずっと力を受け続ける上の歯は、次第にグラグラの状態になり、歯の欠損へと繋がってしまいます。また、既に奥歯の欠損が多い場合は、下の歯の衝撃を受け止める歯の本数が少ないため、1本の歯にかかる力が大きくなり、更なる歯の欠損を招いてしまいます。これが、下の歯よりも上の歯の欠損が先行しやすく、上顎が無歯顎に進行する症例が圧倒的に多い理由です。

これらから分かること、それは、「上の歯は、下の歯の力(外側方にかかる力)をしっかり受け止められるように治療しなければならない」ということです。上顎が下顎からの力にしっかりと抵抗できること、それは慢性疾患とも言える歯の欠損拡大を食い止めるための大きなポイントです。先ほどのとおり、上の歯が下の歯からの力に抵抗できなければ、次第に欠損は拡大してしまいます。

これに加え、手段の選択も大切です。上の歯が下の歯からの力に抵抗するにあたり、歯の欠損がある場合には、その欠損の補綴(ほてつ:補うこと)が必要です。補綴にはブリッジや入れ歯などの選択肢もありますが、これらの治療では、周囲の歯が受け止める力を緩和することができず、歯の欠損の拡大を引き起こす結果になりかねません。その点、インプラントは骨にしっかりと固定するため、周囲の歯に無理をかけることがありません。

歯の欠損の拡大を防ぐため、下の歯の突き上げる力に対して、上の歯が抵抗できることを優先して考える「上顎優先の欠損補綴」。この「上顎優先の治療計画」のもと、他の歯の温存にも有益なインプラント治療を組み合わせ、生涯を通じた健康な咀嚼の維持をお手伝いする。それがなかやま歯科の考える「上顎優先のインプラント治療」です。